加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

令和3年司法試験解答速報「民法」を公開いたしました

民法の雑感

プレテストから令和3年までの17年分の民法の司法試験過去問の中で、ダントツで難しい問題です。

設問1の請求1では、Dの即時取得を理由とする所有権喪失の抗弁との関係で、即時取得の成否を論じることになりますが、「占有を始めた」という要件について占有改定ではなく指図による占有移転との関係で論じさせる問題であるため、だいぶ細かいところから出題してきたなという印象です。また、Cの主張である㋐には「Dから甲を借り受けている」ともあるため、請求1に対する抗弁として使用貸借権に基づく占有権原の抗弁まで問われているかが悩ましいです。さらに、193条に関する解釈(原権利者帰属説の採否)もやや細かいところから出題してきたなという印象です(総まくりテキスト・論証集には論証も掲載されていますが、多くの受験生は判例の結論くらいしか知らないと思います)。

設問1の請求2は、平成21年司法試験設問3の類題であり、ここは過去問分析をちゃんとやっていたかどうかで差がつきやすいと思います。設問1の請求2は、平均的な水準の出題であると思います。

設問2(1)では、請負契約や委任契約かという対立点には多くの受験生が気が付けると思いますが、契約の性質の違いがEの債務の内容にどのように影響するのかという点が非常に難しいです。請負契約であると捉えても、月額報酬60万円に対応する仕事完成債務として、一定数準の授業を行うことが要求されるという点では、委任契約であると捉えた場合における一定水準の授業を行うことを本旨とする事務処理義務(644条)の内容とほとんど変わりがないからです。

設問2(2)では、設問2(1)における検討結果を前提として、適用条文及び選択した条文の要件該当性を検討することになります。設問2(2)も、平均的な水準の出題であると思います。

設問3(1)では、検討事項を網羅できる人はほとんどいないと思います。だいたい何が問われているのかを把握することは比較的容易なのですが、問われていることを網羅した上で、順序だてて説明するのが難しいです。

設問3(2)では、かなり細かい条文操作を訊いています。試験的にはだいぶ細かいが、実務的には重要度が高いという条文知識を訊いているというイメージです。最後の設小問であるため時間があまりないことも踏まえると、正確に処理し切れる受験生はごく僅かであると思います。

 

お詫び

今年の問題が難しいこともあり、解答速報の作成に時間がかかっております。

8科目分の「参考答案」「解説記事」を早く揃えることを優先し、「解説動画」は8科目分の「参考答案」「解説記事」の公開を終えてから収録・公開いたします。

ご不便おかけすることになり大変恐縮ではございますが、ご理解いただけますと幸いでございます。

また、解答速報の公開が遅延しておりますこと、心よりお詫び申し上げます。

 

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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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