質問コーナー「 民法 」
28件の質問

特定物引渡債務の債務者が履行を提供しても債権者が明確に受領を拒絶しているような場合、「債務の履行が・・社会通念に照らして不能」(412条の2)ということで、履行不能といえるのでしょうか。「Law practice 民法II」 第4版の解説では、それを前提にしている(そのような問題に536条2項を適用しているため)と感じましたが、一方で、種類債権は当該種類物が生産停止になったり在庫がすべて滅失したりしない限り履行不能に陥ることは観念できないはずだという認識でしたので、そこに疑問を感じました。例えば、潮見先生の『プラクティス民法 債権総論」第5版〕』24頁も、制限種類債権との比較において、「通常の種類債権では種類に属する物すべてがなくなるということは、めったに起こらないから、履行不能が生じる場合はきわめてまれであるとされる。」と説明しています。また、それが履行不能だとすると、「415条2項や542条1項が、「履行不能」と「明確な受領拒絶」を区別して規定していることはどう説明すればよいのか。わざわざ「明確な受領拒絶」を「履行不能」とは別の要素として想定しているからには、「明確な受領拒絶があっても一概に履行不能とはいえない」ということになるのでは、と考えました。文献等を参照してもよく分からず、加藤先生にご回答頂ければ幸いです。

まず、明確な受領拒絶は、社会通念上の履行「不能」には該当しないと思います。潮見佳男ほか「詳解改正民法」初版124頁では、社会通念上の不能の例として、債務の履行のために必要な費用とそれによって実現される債権者の利益との間に著しい不均衡がある場合(事実的不能)と債務の履行が法的に禁止される場合(法律的禁止)が挙げられている一方で、明確な受領拒絶又はこれに準じる事態は挙げられておりません。また、ご指摘の通り、415条2項や542条1項が不能と履行拒絶を区別して規定していることとも整合しません。 次に、売主が履行の提供をしているが買主が明確に受領を拒絶しているという事案では、受領遅滞の法的性質に関する […]

2020年09月08日

最二小判平成10・4・24は、「契約に基づく債務について不履行があったことによる損害賠償請求権は、本来の履行請求権の拡張ないし内容の変更であって、本来の履行請求権と法的に同一性を有すると見ることができるから、債務者の責めに帰すべき債務の履行不能によって生ずる損害賠償請求権の消滅時効は、本来の債務の履行を請求し得る時からその進行を開始するものと解するのが相当である」として、履行不能による損害賠償請求権の消滅時効の起算点について、履行不能による損害賠償請求権は本来の履行請求権が同一性を維持しつつ姿を変えたものにすぎないとの理由から、本来の債務の履行を請求し得る時であると解していました(山本敬三「民 […]

2020年09月08日

㋐抵当権に基づく妨害排除請求が「不法占拠者」を相手方とするものであり、かつ、抵当権者への直接明け渡しを求めるものでない場合には、①だけで足ります。 ㋑抵当権に基づく妨害排除請求が「占有権限を有する者」を相手方とするものであり、かつ、抵当権者への直接明け渡しを求めるものでない場合には、①に加え②も必要です。②まで必要とされるのは、抵当不動産所有者の賃貸権限(抵当権は非占有担保であるから、抵当不動産の使用収益権限(賃貸権得を含む)は抵当不動産所有者に留保される。)との調整を図るためです(道垣内弘人「担保物権法」第3版183頁、171頁)。なお、①の中に②の趣旨が含まれているとして、②を独立の要件と […]

2020年09月08日

改正民法下では、詐害行為取消訴訟の認容判決の効力が「債務者」にも及ぶため(新425条)、債務者Aによる債務免除等を取り消す旨の判決が確定した場合には、債務者Aと債権者Cとの間においても、債務免除等の取り消しにより債務者Aの第三債務者Bに対する金銭債権が復活したことになります。したがって、既に詐害行為取消訴訟で認容判決が確定しているのであれば、債権者Cは、債権者代位訴訟において、債務者Aによる債務免除等を原因とする被代位権利の消滅の抗弁に対する再抗弁として、債務者Aによる債務免除等が詐害行為として取り消されたことを主張することができます。 もっとも、詐害行為取消権は、必ず裁判上の行使によらなけれ […]

2020年09月08日

矛盾しません。「弁済期の定めのある受働債権とが相殺適状にあるというためには、期限の利益の放棄又は喪失等により受働債権の弁済期が現実に到来していることを要すると解する。」という判例の立場(後者)は、「自働債権の債権者は、自働債権の弁済期が到来したならば、受働債権の期限の利益を放棄して弁済期を到来させることで、相殺適状を作り出すことができる」という記述(前者)を前提とした、「相殺の効力が遡及する相殺適状時はどの時点か」という議論に関するものです。 例えば、「AのBに対する甲債権の弁済期は2020年10月1日、BのAに対する乙債権の弁済期は2020年12月1日、Aが2020年11月1日に乙債権の期限 […]

2020年09月08日

AがBに対する債権をCとDに二重譲渡したという事案における第一譲受人CのBに対する譲受債権履行請求では、被告Bは、AD間における第二譲渡の事実だけを抗弁事実とする「単なる債権喪失の抗弁」を主張することはできません。 単なる債権喪失の抗弁を主張することができるのは、例えば、売主Xの買主Yに対する代金支払請求訴訟において、買主Yが、債権喪失原因として売主XによるZに対する債権譲渡の事実を主張する場合です。 上記の二重譲渡の事案では、被告Bとしては、①「債務者対抗要件の抗弁」と②「第三者対抗要件の抗弁」を主張することができ、Dが第二譲渡について第三者対抗要件を具備しているのであれば、③「Dの第三者対 […]

2020年09月08日

「民法と仲良くなる方法」の1つとして、条文や論点が登場する場面を具体的にイメージするとともに、そのイメージを文章や図として、普段使っている教材の余白にメモしておく(付箋にメモするのもあり)という方法を挙げることができます。 イメージできなければ判例集や短文事例問題集(新・伊藤塾試験対策問題集等)で確認する、イメージしたことを文章や図として普段使っている教材の余白にメモするといったことの繰り返しにより、徐々に、民法の事例処理のパターンが知識として身につくとともに、事例処理における頭の使い方が鍛えられると思います。 例えば、所有権留保売主Aが、買主Bが代金を支払わなかったとして、買主Bからの転得者 […]

2020年09月08日

例えば、XがYに対して動産甲を売却し、引き渡しを終えていないという事例において、理論上は、①売買契約に基づく目的物引渡請求権と②所有権に基づく返還請求権のいずれを訴訴物として構成することができますが、①を訴訟物とするのが通常です。②の請求原因は㋐Yもと所有・㋑XY売買・㋒Y現在占有、①の請求原因はXY売買だけというように、①の請求原因が②の請求原因に包含されるため、①のほうが少なくとも請求原因の面では原告Yにとって有利だからです。しかも、仮にXがZに対しても動産甲を売却しており、Zに対する引渡しも終えている(178条の対抗要件具備)という事情があっても、①であれば、Xが対抗要件具備による所有権 […]

2020年09月08日
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講師紹介

加藤 喬 (かとう たかし)

加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
司法試験・予備試験の予備校講師
6歳~中学3年 器械体操
高校1~3年  新体操(長崎インターハイ・個人総合5位)
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
労働法1位・総合39位で司法試験合格(平成26年・受験3回目)
合格後、辰已法律研究所で講師としてデビューし、司法修習後は、オンライン予備校で基本7科目・労働法のインプット講座・過去問講座を担当
2021年5月、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立

執筆
・「受験新報2019年10月号 特集1 合格
 答案を書くための 行政法集中演習」
 (法学書院)
・「予備試験 論文式 問題と解説 令和元年」
 憲法(法学書院)
・「予備試験 論文式 問題と解説 令和元年」
 行政法(法学書院)
・「予備試験 論文式 問題と解説 平成30年」
 行政法(法学書院)
・「予備試験 論文式 問題と解説 平成29年」
 行政法(法学書院)
・「予備試験 論文式 問題と解説 平成23~
 25年」行政法(法学書院)

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