伝聞法則 「要証事実との関係で公判廷外供述の内容の真実性が問題となる」の意味

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伝聞証拠であるかは、形式説によれば、「要証事実との関係で公判廷外供述の内容の真実性が問題となるかどうか」により判断されます。

だからこそ、ある公判廷外供述が伝聞証拠に該当するかは、要証事実との関係で変わり得るわけです。

例えば、あるメモが伝聞証拠に該当するかどうかを判断する際に、要証事実ではなく、いきなりメモの作成過程から考えると、伝聞・非伝聞の結論を誤ってしまう可能性があります

メモは、作成者の知覚・記憶・表現・叙述を経て作成されるのが通常です。

そうすると、メモの伝聞証拠該当性について、当該メモが作成者の知覚・記憶・表現・叙述を経て作成されたかどうかという観点から判断すると、ことごとく、伝聞証拠に該当するという結論になってしまいます。

伝聞証拠該当性の判断においては、まず初めに、要証事実から確認します。

その上で、当該要証事実が公判廷外供述の主体が知覚・記憶・表現・叙述した事実であるかどうかを確認します。

このように、要証事実との関係で公判廷外供述(例えば、メモ作成者乙の供述)の内容の真実性が問題となるかは、メモの作成過程に乙の知覚・記憶・表現・叙述が介在するかではなく、メモ作成者乙が知覚・記憶してメモに表現・叙述した事実が要証事実であるかどうかにより判断します。

{注}例外的に、心理状態に関する公判廷外供述を本人の供述当時の心理状態を要証事実として使う場合には、本人が表現・叙述した事実が要証事実であるにもかかわらず、非伝聞となります(なお、伝聞証拠とする説もあります。)。

なお、私は、「要証事実=直接の立証事項(証拠から直接推認しようとする事実)」という理解に従って説明しています(古江賴隆「事例演習刑事訴訟法」第2版335頁、「刑事訴訟法判例百選」第9版事件86解説「池田公博:平成30年まで考査委員])。

平成30年の出題趣旨・採点実感では、敢えて、要証事実という表現が使われていません。

これは、「要証事実=主要事実、証拠から直接推認しようとする事実=立証事項」という理解に立っている堀江慎司教授(宇藤・堀江ほか「リーガルクエスト 刑事訴訟法」第2版378頁)と「要証事実=直接の立証事項(証拠から直接推認しようとする事実)」という理解に立っている他の先生方の双方が平成30年司法試験の考査委員だったからであると考えられます。

平成30年の出題趣旨・採点実感では、敢えていずれか一方の理解を前提とする表現が用いられていないため、「最終的な立証命題=主要事実、直接の立証事項(証拠から直接推認しようとする事実)=要証事実」、「要証事実=主要事実、証拠から直接推認しようとする事実=立証事項」、いずれの理解でも構わないという見方もできるかもしれません。

しかし、司法試験委員会が元々は「要証事実=直接の立証事項(証拠から直接推認しようとする事実)」という理解に立っていたこと、令和3年以降再び「要証事実=直接の立証事項(証拠から直接推認しようとする事実)」という理解が出題趣旨・採点実感で明示される可能性があること、及び平成28年までの出題趣旨・採点実感では「要証事実=直接の立証事項(証拠から直接推認しようとする事実)」という理解が前提とされているためこちらの理解を前提にした方が出題趣旨・採点実感を理解しやすいことから、「要証事実=直接の立証事項(証拠から直接推認しようとする事実)」と理解するべきであると考えます。

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講師紹介

加藤 喬 (かとう たかし)

司法試験講師
6歳~中学3年 器械体操
高校1~3年  新体操(長崎インターハイ・個人総合5位)
青山学院大学法学部
慶應義塾大学法科大学院(既修)
労働法1位・総合39位で司法試験合格(平成26年・受験3回目)
合格後、辰已法律研究所で講師としてデビューし、司法修習も終え、現在は、資格スクエア・BEXAで基本7科目・労働法のインプット講座・過去問講座を担当

(開講中の講座)
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・労働法事例演習解説講義・2020年リニュ
 ーアル版

(執筆)
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